40代の悩みに効く物語

「オナニーマスター黒沢」感想-本当の自由の手に入れ方

本作は「オナニーマスター黒沢」は、学校を舞台に繰り広げられる思春期の人間関係に悩む中学生たちの物語だ。

テーマは「思春期からの卒業」だ。ってこのタイトルはなかなかインパクト大だが。エロ漫画ではないのでぜひ読んでいただきたい。

本作は、kindle版のみになります→購入はこちらから
またkindle unlimitedで全巻読めます登録はコチラから

あらすじ

精神的にも物理的にも閉じたオナニストといじめられっこ

黒沢翔 プロフィール(主人公)
中学2年~3年生/男子
・クラスの中に仲のいい友達はいない(かった)。
・妄想でクラスメイトの女子を犯すことが日課。

まずは、どんな話か追っていきますね(ネタバレありです)

舞台は中学校の2年生から卒業まで。主人公は、クラスでも目立たない存在である男子の黒沢。

物語の前提にして主軸をなすのが…彼の秘密の日課。それは、放課後誰も来ない校舎の女子トイレの個室で、クラスメイトの女子を妄想で犯しオナニーをすること

その黒沢と共に物語の軸になるのが、黒沢の日課の秘密を知ったいじめられっこの女子の北原。黒沢に秘密をばらさない事との取引として、自分をいじめている女子の持ち物に精子をかけることを指示…体育の時間に教室に脱いでおいてある制服にかけたり…縦笛の中にかけたり…鞄の中の教科書にかけたり…

いやー最低ですね黒沢(笑)

中学2年にとってのオナニーなんて、脳内の大半を常に占めていること…まぁ言ってしまえば…オナニーするために生きているに等しい存在、それが中学二年男子。

このマンガが注目されたのって、この男子みんなに共感されるけど、マンガのテーマとしては扱いずらいオナニーをど真ん中に据えたことなんだろうなと。

まぁ、それはいいとして、黒沢と北原この2人がこの話の中心です。2人とも、世の中に対して「閉じている」存在です。

黒沢は、クラスでは目立たず、女子トイレの個室の中でオナニーという精神的にも物理的にも閉じている。北原も、いじめに合うことで、精神的に完全に閉じた状態。

このお話は、単純に言えば、この閉じた2人が「開いていく」成長物語。他者に対して閉じていた人が、開くにはそれは大きな痛みを伴うわけで…。

精神的にも物理的にも開くオナニスト

物語は、黒沢が他者に対して「開く」ことで大きく動く。

どう開いたのか?黒沢は、女子の持ち物に精子をかけていたのは自分であることをカミングアウトしたのだ。

彼は自分が恋した女子の滝川が、他の男子と付き合いはじめた事に心を乱し、滝川のカバンの中に自らの精子をぶちまけた。

滝川は明るくふるまう女の子だったが、これを機に他者に心を閉ざしかける。しかし黒沢は、滝川が元々は自分と同じように周りの人間関係から閉じていた過去を持ちながらも、他者との関係を築こうと懸命に努力をして明るくふるまっていた事実を知りる。

黒沢は、開いていこうとしていた滝川を、自ら手で閉じさせてしまったことに深く後悔。そしてカミングアウトにつながる。

まさしくこの場面がこの物語のハイライトと言えるだろう。

このカミングアウトをきっかけに黒沢は「オナニーマスター」と呼ばれます。つまり、クラス中から凄惨ないじめをうけるようになるわけです。

黒沢は、トイレから出て自分の罪を告白し、他者に対して開こうとした。しかし当たり前だが、罪を犯した黒沢に対してクラスメイトは逆に閉じる

それを承知の上で、まず自らが開こうとしたわけですね…

中学生のエロ系のやっちまった話は、ばれなければ墓までもっていきたい気持ちがやまやまな…黒歴史の代表的なネタですわな。

オナニストがいじめられっこを開く

そして物語は最終章。ネットでこのマンガの感想なんかを見ていると、この終わり方へはけっこうみんな不満のよう(笑)というか、終わり方って不評を買いやすい。いい作品であればいい作品であるほど。

どう締めくくられたのか?

他者に開いた黒沢に対して、滝川をはじめクラスメイトたちが罪を許し受け入れられる。なんなら黒沢は、彼女ができかける(滝川ではない)。

一方で、いじめが終わらず閉じたままであった北原は、黒沢だけがむこうの世界に行ってしまったことでさらに深い闇に入ります。

黒沢は、自分が開いたように北原を開かせようと、彼女のドアをノックし続ける。そして中学卒業後に開かれた同窓会へ連れ出すことにまで成功する。

なんかこの終わり方への不満がでるのもわかるかな?いやいや、そんなうまくいかないでしょ…みたいな感想です。

私は無理やりハッピーエンドになろうがどうなろうが、そこには大きく執着するつもりはないし、うん、いやまぁそれはそれでって感じ。

ここでは、このマンガの主題についてもっと深く考えたい…という方向に話を進めたいなと思います。

みどころ

傷つきたくないから行動しない

このマンガの主題である「女子トイレの個室でオナニー」が、このマンガを象徴している。ってこんな大真面目で語るってやばいやつだが。でもそうなんです!

何が言いたいかと言えば、「女子トイレの個室」は他者と断絶した「閉じた状態」の象徴であり、「オナニー」は、妄想を自分一人で勝手に広げることができるという意味では自由だが、実際に女性といたすことはできない不自由な状態の象徴なのだ。

その状態から「開いた」黒沢はどうなったのか?と言えば…

黒沢は、自分の思い通りにはならない「不自由な現実」の中で、でも自分次第では今後どうとでもできるという「自由」を手に入れたわけです。

対人関係で傷つきたくないと個室に閉じこもった黒沢が、不自由な現実を受け入れて行動するようになったわけです。

本当の自由は不自由な対人関係の中にある

これはまさに「ひきこもり」問題を語った作品なのではという気がしてきました。「いま?」って感じですかね。。すいません。今気づきました。

ということで、この黒沢の変化を理解するためにこちらの本を読んでみました。

この本のサブタイトルは「終わらない思春期」やばいですね。伊集院光が自分のことをまだ「中二病」だと言っていたが、それくらいやばい。

「ひきこもり」を「終わらない思春期」と言っているのだ。

どういう意味か?

「終わらない思春期」とは「誰もが無限の可能性を秘めている」と信じていることを指すのだそうです。つまり「ちゃんと現実見ろ。お前には無限の可能性なんてない」と自覚することで「思春期」は終わるのだそうだ。

「聞いてるかー!!本田圭佑、長友佑都!お前ら思春期終わってねーぞ」って言っているわけだ。

言い方変えれば「ここではない、どこかへと、胸を焦がすよ」という状態ですね。なんかこの本読みながら、頭の中をこの曲がリピートされ続けました。

自分の限界知るというのを「去勢」というとのこと。それを拒否することを「去勢避妊」じゃなくて「去勢否認」というらしい。

しかも「去勢避妊」させているのは「学校」だと言う。間違えた「去勢否認」だった。。学校が大きな夢を描けといい、本田圭佑が不可能はないといい、大学生になってもリクルートにそそのかされて自己分析をし…いつまでたっても思春期が終わらない。

いつまでも「俺はまだ本気だしていないだけ」と言い続けると、どうなるか人は孤立するのですね。現実を受入れられなければ、人を受け入れることもできないわけ。これは自明の理だ。

黒沢が受け入れたように「自由な不自由」の現実を受け入れる必要があるのだ。不自由だからこそ、人とつながらなければいけないのだ。

つまり対人関係という不自由さに向き合わなければ、本当の自由は手に入れられないのです。

そう考えると、さすがに思春期を卒業している本田圭佑らは現実を受け入れながら、受け入れないというスーパーな体質をもっているのだろうか。

対人関係で傷ついた心を癒す方法

しかしそこでじゃまをするのは「人って怖い…」ということですよね。斎藤先生(急に名前出てきましたがさっきのひきこもりの本書いている先生です)は、人が成熟するには「外傷の体験と回復」が必要であると書いている。

つまり、対人関係で傷つくのはしょうがない!でもそこからきちんと回復できるようにトレーニングしましょう!ということ。

傷つけるのは人ですが、そこから回復する手助けをしてくるのも人だといいたいわけだ。

黒沢は、ド変態な行動をした自分を他者にさらして傷だらけになる。でもその黒沢を救ったのは、同級生の長岡であり、黒沢が恋焦がれた滝川からの許しだったわけだ。

まとめ 思春期からの卒業の痛みは誰も逃れられない

最後に、このマンガの最後のストーリーが非常に興味深い。北原をいじめていた張本人である女子、須川ですら同じ状況を抱えていたことだ。

そのお話は中学を卒業してから黒沢と(なぜか)急接近している時に語られる。「何をしてもつまらない」と。黒沢はその須川の気持ちを理解し次のように一人語りをしている。

黒沢

中学生は子供だ。ついこの前まで中学生だった僕たちでも、ある時期を境にしてそれに気づいてしまうことがある。

僕の境目は分かりやすかった。クラスメイトの面前で自分の行いをぶちまけたあの日から今まで見ていた世界がとてもちっぽけなもののように思えてきた。

僕はあれから随分と人に怯え、些細なことで傷つくようになった。かつてはごく身近な人間ですら路傍の石くらいにしか思っていなかったのに。

僕は確かにあの日を境に人間関係というものへの意識が激変した。須川は今その時期に来ているのかもしれない。

今までとは別世界に来てしまったような感覚に戸惑いを隠せないのだろう。そんな時は無性にだれか心を委ねられる人が欲しくなるのだ。

須川の気持ち…私もよくわかります。別にいじめられていたとかでなくても、中学校というほとんど小学生や保育園のころからの付き合いの友達関係で生まれる外傷と回復と、高校の友達関係で生まれる外傷はまったく違う。

私自身も学生生活で一番つまらなかったのは高校生の時だったなぁと思いだしました。まぁその経験があるから大学でそれなりに友人関係を築きながら楽しい生活を送れたのかもしれませんが。

いやぁでも…こういうモードになるとき、未だにあります。正直言って。今年40歳を迎えるわたくしテリーは、本当に思春期を卒業しているのか?ちょっと心配になってきた。

本作は、kindle版のみになります→購入はこちらから
またkindle unlimitedで全巻読めます登録はコチラから