40代の悩みに効く物語

「ラストトーキョー”はぐれ者”たちの新宿・歌舞伎町(前編)」-片隅で這い上がってきた人々と裕福な若者の葛藤

NHKのドキュメンタリー番組の紹介。東京新宿で麻雀店と営む71歳の母親を持つNHKのディレクター柚木が、母親が生きてきた新宿歌舞伎町にはじめて足を踏み入れるドキュメンタリー。

テリー

新宿で生きてきたたくましい人達が主役に見えるが、彼女、彼らを映すことで、反射して見える今の時代を生きる若者(娘)の葛藤が表現されている。戦後すぐから生きてきた人達から私たちは何を学び行動するのか考えさせられる

番組概要

2019年7月28日放送
NHKオンデマンド BS1スペシャル エピソード83
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あらすじ 歌舞伎町で生きてきた人達のたくましさ

このドキュメンタリーの主人公は、新宿歌舞伎町で3軒の麻雀店を営む71歳の女性・柚木佳江。その主人公を追うのは実の娘でNHKのディレクター柚木映絵(てるえ)。映絵は、母が麻雀店を閉めると話したことから、母親の生き様、歌舞伎町と言う町を残しておきたいとこの取材を始める。

歌舞伎町は東京オリンピックを前に国家戦略特区として、世界のエンターテイメントシティになることを掲げ大規模な再開発がはじめっていた。そのような華やかな町の大改造プロジェクトの裏で、母親をはじめこれまで歌舞伎町で生きてきたどうなってしまうのか、彼女たちがここで生きてきた意味はなんなのかという問題意識を持つ

2018年1月3日から撮影は始まる。母・佳江の麻雀店にはじめて足を踏み入れた映絵。佳江の麻雀店は、27歳の時からはじめてもう45年。そこには母を支えた20人もの高齢の女性従業員たちがいる。そこでは佳江が苦労して築いてきた城とその仲間たちが登場する。

またその原点となった佳江の生い立ちが紹介される。父親が愛人の元に行き、母と二人暮らしで育った。その生活を経済的に支えたのは父親とその愛人であった。佳江は、二人を見返してやろうと商売をはじめたのだ。

また映絵は、新宿に生きる人々に会い取材を重ねる。登場するのは、歌舞伎町を舞台に活動する「屍派」という俳句グループ、そのリーダー北大路翼氏、虎のマスクをかぶり新聞配達をする名物じいさん「新宿タイガー」、年に1度建設現場等で働く労働者が集まり劇を行う「水族館劇場」というグループなど、様々な歌舞伎町で生きる人々だ。映絵は、この人々の圧倒的なバイタリティに圧倒される。

元々自分のことを、敷かれたレールの上に乗って、勉強して大学に入って、安定した職業を就いただけと話し「自分は見るべきものを見ていないのではないか」とコンプレックスとなっていた。母や取材を通じて知り合った歌舞伎町の人々のことが自分には本当のところで理解できていない。そんな自分の葛藤も、母親にぶつけるのであった。

母と娘の対話 「だけどそれはやっぱ甘いね」

映絵がその葛藤を母にぶつけるシーンがあった。ちょっと長いがそのまま引用する。今の年寄りに比べれば何不自由なく暮らしてきた若者の葛藤がリアルに映し出されている。

母・佳江

たたき上げで来てる人たちだからこそ、悲しいし、自分がだめだったら自分の責任しかないわけだよね。会社のせいでもないし、なんのせいでもなく。それって自己責任なんだよね。自分で責任をとって、自分で傷ついて没落していくか、はいあがっていくか、もうそれしかないと思うのね。

娘・映絵

そしたらさ、私は保証があるわけじゃない?保証があるからさ、自分のルールっていうのがなくても生きてこられたから、お母さんとか北大路さんとかタイガーさんみたいに、自分のルールで生き抜いてきた人たちの強さっていうのに憧れるわけだけど。そういう私みたいなのは、どうやって知ったらいいのかな?

母・佳江

それはそれで恵まれてるんだけど。それはいいことだよね。ただその人の心も知るとあなたはすごく強くなるよね。でも話聞いただけじゃ分かんないよ

娘・映絵

どうやったらわかるのそれ?

母・佳江

だって、あなたがね、学歴とかいろんなのがあって会社をかなぐり捨てて、それはやめときなさいねって言うよね、誰でも。負けるに決まってるんだから。たたき上げの人っていうのはね、踏みつけられても這い上がるから。

娘・映絵

それは分かってるよ。だから自分は自分が嫌いだって言ってんじゃん

母・佳江

それはそうなる必要はないんだけど。もしそれを知りたいんだったらば………その人の話を聞いたりとか、その人の心に寄り添ってみて、そういうことなのかなって、自分と全く関係ないと思わないで自分の中に取り込んでみたら?

娘・映絵

(関係ないと)思ってないから撮ってるんだけど、だけど私話聞いただけで分かる気はしないよね

母・佳江

今持ってる肩書とかいろんなものを捨てるっていうのは、できないでしょ。だって。

娘・映絵

それは分かんないよ。でも願望はあるよ

母・佳江

だけどそれはやっぱ甘いね

娘・映絵

それは分かるよ。だから甘いって言われるから余計にコンプレックスなんで。じゃあどうしたらいいか分からないじゃん。お母さんは自分がそういう道でやってきて、私にはそういう道を歩ませたくなかったんでしょ?

母・佳江

巡り合わせじゃない?結局そうなるでしょ?自分の子どもにはみんなそうだよね。たたき上げてきた人って自分の子にはそういう思いをさせたくないと思うの。だから高学歴、高収入で安泰に暮らしてもらいたいって。人間ってそうなんじゃないの?それでいいんじゃない?

おわりに 親の苦労と子供の葛藤と

「どこかの町で負けてきた人がこの隙まで生きている。隙間じゃなきゃ生きられない人に光を当てて多様性がなければ新宿の町は成り立たない。」

これは、佳江が、新宿という町、そこで生きる人々について表現したフレーズだ。佳江たち世代の苦労と、自分たちを生かしてくれた新宿歌舞伎町という町への思い、そんな人達を見て「自分には何もない」と感じる映絵。

変わりゆく新宿の中で何か残さなければいけないものがあるのではないかと始まった撮影は、映絵の自らの生き方への葛藤へとつながっていったのだ。

後編へ続く

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