マンガ

男子高校生が抱える心苦しい葛藤とは(音楽)

奇才・大橋裕之が描くちょっとずれた青春不良物語。不良高校生が突然バンドをはじめ、特に劇的なこともなく、ただ何かに葛藤していることだけは伝わってくる?お話だ

大橋裕之の独特の絵柄、コマ割りは、描かれていること以上に、読む人の感情を揺さぶる。しかし何がどう揺さぶられたのか言葉にすることが難しい。そして本作は、漫画だけではなくアニメーション映画にもなっている。これは大橋作品の中でのちょっとした革命だ。

テリー

本作は、ゾッキのお話と違って何か変な思い出が出てくる…というものではなかった。不良少年の心の葛藤が、大橋裕之の絵と謎ストーリーで伝えられる、そんな謎物語である。

あらすじ(完全ネタばれ)

研二 プロフィール(主人公)

高校生/男子
不良、友達は朝倉と太田
急にバンドをはじめた

不良高校生の研二は、仲間の朝倉と太田に唐突に「バンドやらないか?」と声をかけた。二人もなぜか乗ってきた。三人とも楽器などできない。研二は楽器をぱくってきて練習をはじめた。適当にやっただけだけど「すんげえ気持ちよかった」。同級生の亜矢が三人に丸武工業の不良がタイマンやりたいと言っていると伝えたが、バンドに夢中の三人は断った。

バンド名を「古武術」と名付けた。同じ高校に「古美術」という名のバンドがあることが分かった。古美術も男三人のバンド、でも古武術と違ってひ弱そうなロン毛だった。しかし二つのバンドは意気投合し、一緒に町のロックフェスティバルに出る事になった

フェスに向けて練習をしていたある日、研二が唐突に「俺バンド飽きた」と二人に告げ、練習を辞めた。。亜矢は「やっぱりただのバカだったか」と言い、研二は亜矢のケツを触り、殴られた。

フェス当日、研二はベースを持って家を出た。そこに丸武工業の不良が研二をフェスに行かせないよう立ちふさがった。研二はなぜか自らベースを叩き壊し、リコーダーを「ピヒョロリロリピーィツ」と吹きながら不良たちから逃げフェスに向かった。フェス会場では、朝倉と太田二人がステージに上がっていた、そこに研二がギリギリ間に合いステージに上がった。研二は演奏を終えると号泣した

見どころ 王道からはちょっと?絶妙に?ズレている

よくある高校生の不良物語のようで…なんだかちょっとずれている感じが面白い。

不良漫画の王道で言うと…

ケンカのやたら強い主人公はボクシングの才能があった。しかし我流で才能だけでやっている主人公は、真摯にボクシングに打ち込んでいるライバルにはかなわない。ライバルにボコボコにやられてプライドを大きく傷つけられる。主人公は奮起して練習に打ち込むが壁にぶつかる。そんな主人公にボクシング技術を教えてくれる謎の指導者が現る。日本一になるために主人公とライバルは切磋琢磨していく。ヒロインはそんな主人公を応援する。しかし昔ケンカで主人公にやられた不良が主人公のじゃまをする。みたいな…「ろくでなしブルース」的なストーリーが王道だ。

しかし本作では、そもそも特に才能はない。ライバルが出現してようにみせてひ弱な同級生。そして張り合うライバル関係にもならない。主人公は特に壁にもぶつからない。ただ「飽きる」だけ。目指すのは日本一ではなくて町のロックフェス。邪魔に入る不良はいるが、主人公の謎行動でまかれる。

この王道ストーリーとのズレが本作の魅力である。あまり漫画的な劇的な展開にはならないが、それがリアル。でも漫画でしかありえない謎行動のオンパレードは、非リアル。

アニメーション 大橋裕之の世界観が増幅されている

大橋裕之のあんなふにゃふにゃしたか細い線がアニメで動くとはいったい…!?と思って見たが、雰囲気そのままにアニメになっていてびっくりした。いやそれ以上に、キャラクターや背景が動くことにより、あの不思議な世界観が増幅されている。大橋裕之にはまった人にはぜひ見てほしい。

おわりに 研二が動かした衝動は何か

この謎作品の中で、確かにあったのは、研二の何かの衝動、葛藤だ。それはもしかしたらモテたいだったのかもしれないし、青春したかったかもしれない。その解釈は読んでいる我々に任されている。