自己啓発書

マーケターのように生きろ(井上大輔)【際立った「個」がないと生き残れないのか?】

現代社会はこんな言葉で人々をめった刺しにします。

「あなたのやりたいことは何ですか?」
「これからは組織に依存していたら生き残れません」
「起業しろ、副業しろ、SNSやれ」

「個の時代です」

そんな言葉を突きつけられるたびに、からっぽな自分を自覚して死にたくなりませんか。

本記事では「際立った「個」がないと生き残れないのか?」という問いに答える本「マーケターのように生きろ「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動」を紹介します。

もちろんこの問いに対する本書の答えは「NO」です。

1.概念の説明

本書が主張する「マーケターのように生きる」とはどんな生き方なのでしょうか?本書を引用すると以下のように説明されています。

自分を表現するのではなく、人の期待に応えることを追及するのです。そのために、まずは相手をよく知り、相手が何を求めているかに思いをめぐらせます。そして、自分にできる精一杯でそれに応えます。

「個」というとどうしても、「0から1」を作る力が求められているような気がします。自分のやりたいことを見つけ、自分の力で「目指すビジョン」を実現するみたいな。

本書では、そんな「個の生き方像」に対して、「人の期待に応える」という生き方があると主張しているのです。

それは何も後ろ向きなプランBではありません。これは「自分という商品」を活かせる市場を決めて、そこで求められる価値を理解し、自分の価値を作り、伝えるということです。

それは簡単な事ではありませんし、人から求めらえる自分を作るというとても幸せな生き方であります。

著者の井上大輔氏は自身のバンド経験から、音楽は「自分を表現する手段」ではなく「観客を喜ばせる手段」であることに気づいたと言います。

「エンターテイメントとは接待なのだ」と。

「マーケターのように生きる」とは、「自分という商品」を活かせる市場を決めて、そこで求められる価値を理解し、自分の価値を作り、伝えること。

2.マーケターとして生きる方法

本書ではマーケティングの4つのステップで、「相手を知り、その期待に応える」ための実践知を紹介しています。この記事でもポイントをダイジェストで紹介します。

①市場を定義するー価値を提供する相手を決める

市場を定義するとは「価値を提供する相手」を決めることです。

ポイントは「最も人数が多く、かつ自分を最も役立てれそうな人たちは誰か?」と考えることです。どのように市場を分類するか、有望な市場はどこかを考えます。

何か話を大きくとらえてしまいそうですが、まずは職場の中で自分をどう役立たせれるかと考え見てください。

「営業のプロ」という市場に自分を売るのか、「営業組織構築のプロ」という市場に自分を売るのかで、自分の磨き方は全然変わってきます。

いま漠然と仕事をしているのであれば「自分が誰を相手に仕事をしているのか?」そして「誰にあなたの力を役立てるのが一番いいのか?」しっかり考えてみましょう。

もしくは「自分を必要としてくれる人は誰だろう?」とちょっと周りを見渡してみるのもいいかもしれません。

②価値を定義する-機能的価値・情緒的価値

価値を定義するとは、①で選んだ人たちが求めるものの最大公約数を探っていくことです。

そのために大切なのは、まず「価値」とは何かを知ることです。

下の4象限の図を見てください。

価値とは何かと言われれば、右上の「いま役立つ」実利価値をイメージしますよね。わかりやすく困ったことを解決してくれる人ですね。

しかしそれだけでは価値の一面しかとらえていません。

右下の「何かあった時に役立つ」とは何か。例えば、若い営業マンの横にしっかりしてそうなベテランがいた方が、相手の信頼は確実に高まりますよね。

まさにこの人がいればリスク管理しているだろうとか、トラブルがあってもきちんと対応してくれるだろうと感じれる「保証価値」です。

この右側の2つは「機能的」と言っているだけあって、実際に役立つ価値ですね。

それでは左側の「情緒的」な価値とはいったいなんでしょうか。

左上の「アクセサリーのように意味がある」評価価値とは、相手にとってあなたに仕事をしてもらっていることが周りに誇れるということです。

左下の「お守りのように意味がある」共感価値とは、別に周りに誇れるわけではないけど、あなただから仕事をお願いしたいと思える何かがあるということです。

あなたに何の機能もなければそれは問題ですが、人材の評価はそれだけではないということを覚えておく必要はあるでしょう。

同じくらいの能力だったら、話しかけやすいとか、いつもポジティブな話をしてくれるとか、そんな情緒的な価値がある人に仕事お願いしたいですよね。

あなたの相手は、あなたにどんな価値を求めているのでしょうか?多角的に見直してみましょう。

③価値を作る-機能・主張・外観 商品の価値観は何か

さて、実際に商品の価値をどうつくるのか?というレシピを紹介します。

商品価値は、3つの要素の組み合わせから出来ています。

実利価値・評価価値を提供する「機能」だけではなく、評判価値や共感価値を提供する「主張」や「外観」も含めて、商品の価値は作られます。

あなたが提供できること、例えば「ライティングスキル」があったとします。相手に正確にかつ魅力的に伝え、相手を動かす「機能」です。

そのようなスキルを持った人は数多くいると思いますが、その背景にある「主張」、つまり価値観は同じとは限りません

それは、世間に出回っているライティング本のタイトルを見れば一目瞭然です。以下の2つの本のタイトルを見てください。

「伝わる・揺さぶる!文章を書く 山田ズーニー」

「人を操る禁断の文章術 DAIGO」

どうですか?まったく背後にある価値観が違うと思いませんか?

前者の目次を見れば「自分が一番言いたい事を発見する」や「根っこの想いに忠実か」といった、「それ本当に本当にあなたの言いたい事なの?そうじゃなきゃ伝わらないよ!人は動かないよ!」という主張です。

後者は「7つのトリガーだけで相手は動く」や「5つのテクニックで思うがままに誘導できる」といった、「人心掌握」「大衆煽動」の方法を紹介した本です。

本のタイトルとはまさに「外観」です。それぞれの主張をまとったタイトルになっています。

あなたが提供する価値にはどんな「主張」がありますか?それを意識することであなたという商品はより鮮明な価値をもってきます。

④価値を伝える-誰も比較検討なんてしてくれない

最後にあなたの価値をどう伝えるのか?ということです。

まず大事な前提として、人はすべての選択肢を網羅的に並べて比較検討することなんてないという事実です。

自分のことを考えてもわかるとおり、選択肢が多くあり、そこから何かを選ぶというのはものすごくストレスです。

例えば、自分のスキルを販売できるプラットフォーム「ココナラ」で、「ビジネス文章作成」を誰かに依頼したと思い、サービス提供者を検索すると40件出てきました。

これ全部見て検討しますか?この人は納期短くても行ける、この人は経験が豊富、検討するモノサシを作り、5段階評価で…なんてするわけないですよね。

そんなことしなくてもいいように、評価が☆で見れたりするわけですよねぇ。

つまり、あなたがいかに優秀なビジネス文章作成者だとしても、ここに掲載してすぐ仕事とるなんて不可能ですよね。

それではどうすればいいのか?

まず存在を知ってもらう「覚えてもらう」、そしていい印象を持ってもらう「好きになってもらう」、最後に「(感覚で)選んでもらう」という3ステップになります。

黙っていても優秀な自分には仕事が来る可能性は…ありません。ココナラの例で言えば、依頼者に自分から仕事の提案をすることができますし、ブログで自分をアピールすることができます。

そうやって泥臭くまずは、自分の存在を知ってもらう活動をしなければなりません。その上で実際に仕事を受注して、最高の仕事をすれば高評価をつけてもらえます。

その繰り返しで、認知(覚えてもらう)と評価(好きになってもらう)を上げていき、あなたのプロフを見て選んでくれる人が出てくるというのが基本の攻め方になるでしょう。

そうしてあなたに継続して仕事を頼む人が出れば、それはあなたに「評判価値」や「共感価値」までついた証拠と言えるのではないでしょうか。

・①市場を定義する→「最も人数が多く、かつ自分を最も役立てれそうな人たちは誰か?」と考える。

・②価値を定義する→何ができるかという「機能価値」だけではなく、あなたの価値観など相手にとって意味のある「情緒的価値」も重要。

・③価値を作る→あなたが提供する価値の「主張」を意識することであなたという商品はより鮮明な価値をもってくる。

・④価値を伝える→存在を知ってもらう「覚えてもらう」、そしていい印象を持ってもらう「好きになってもらう」、最後に「(感覚で)選んでもらう」という3ステップで考える。

3.おわりに

本書の問いは「際立った「個」がないと生き残れないのか?」ということでした。

本書はその解を明確に「NO」と言い「人の期待に応える生き方」があると主張しました。それは「自分という商品」を活かせる市場を決めて、そこで求められる価値を理解し、自分の価値をつくり、伝える、ということです。

本記事では、「①市場を定義する」「②価値を定義する」「③価値を作る」「④価値を伝える」という4つのステップについて簡単に解説しました。

本書では、それらのステップについて、自分のキャリア形成にどう活かすか?人生にどう活かすか?といった視点もプラスして詳細に説明されています

マーケティングの入門書としてもすごく良書だと感じました。

より詳しく知りたいという方はぜひ本書を読んでみてください。

著者のやさいしい語り口で勇気の出る本です。オラオラ系(?)の自己啓発書に疲れた方もぜひ